その養子縁組、ちょっと待って!相続対策としての養子縁組に潜む落とし穴

相続対策について調べていくと、養子縁組を勧める記事にたどり着くことが多いようです。

筆者も相続対策についての相談を受ける際、養子縁組についての質問をいただくことが幾度となくありました。

ですが、安易な養子縁組は相続の際に問題を引き起こしてしまうこともあるのです。

今回は、相続対策としての養子縁組について解説をしてみたいと思います。

相続対策として養子縁組が行われる理由は大きく分けて2つある

筆者の経験上、養子縁組を検討されている方が興味を持たれている理由は、大きく分けて次の二つでした。

パターン① 遺言を作らずに遺産を渡したい

 遺産を渡したい相手と養子縁組してしまえば、遺言書がなかったとしてもいくらかの財産は養子に渡ることになります。

パターン② 相続税を減らしたい

 相続税は相続人の人数によって基礎控除(非課税枠)が変化しますが、養子縁組することで相続人の人数を増やし、基礎控除を大きくしようとすることを狙うものです。

養子縁組は、事情によっては上記の理由に対して有効となりえますが、この後で紹介するように、トラブルのもとになる可能性も大いにあります。

一度縁組してしまうと容易に離縁できない

養子縁組というのは、養親と養子がお互いに成人していれば、両者の合意によって成立します(養子が未成年の場合には保護者との合意)。

なので、当事者のどちらかが縁組をするつもりがなければ成立しないのですが、その逆もしかりなのです。

どういうことかと言いますと、一旦養子縁組をしてしまうと、その関係を解消するには、やはり両者の合意がなければならないのです。

上記のパターン①で、面倒を見てくれていた甥に遺産を渡すため、養子縁組をされた方がいらっしゃいましたが、その後甥と不仲になってしまったため、縁組を解消しようとしたところ、遺産を目当てに縁組の解消に応じてくれないというケースがありました。

縁組は両者の同意がなければ解消できないため、遺産を渡すのが目的であれば、養子縁組ではなく、一方的に内容を変更できる遺言を作成する方法を選ぶ方をおすすめします。

また、パターン②の事例では、同居していた息子の配偶者を相続税対策のために養子にしていたところ、のちに息子夫婦が離婚してしまったにもかかわらず、息子の元配偶者が離縁に応じてくれなかったということがありました。

節税のために養子縁組をするのであれば、縁組の有無に関係なく、いつかは財産が渡る予定の相手(例えば孫)を養子に選ぶのが無難です。

ただし、その場合でも他の相続人から不満が出ないように配慮する必要があるでしょう。

養子縁組は必ずしも相続税を軽減させるとは限らない

養子縁組によって相続人を増やし、相続税の基礎控除枠を広げることで相続税を軽減させようと考える方もいらっしゃいますが、先ほどの事例とは違う理由で裏目に出てしまうことがありますので注意が必要です。

養子縁組をした場合、実子がいれば一人分、実子がいなければ二人分まで基礎控除が増加します。

ところが、実子がいない場合というのが問題となりうるのです。

例えば、子どものいないご夫婦で、夫には他に5人のきょうだいがおり、きょうだいにはそれぞれ2人の子どもがいたとします。

夫が亡くなった場合、その時点のきょうだいの生死によりますが、妻を含めた相続人は6人から11人となります。

ところが、例えば甥姪のうちの一人を養子にしていた場合、夫が亡くなったときの相続人は妻と養子の二人だけになってしまうのです。

これは、パターン②だけでなく、パターン①であったとしても同じ結果となります。

養子縁組の前後で、相続人がどう変化するのかは慎重に検討しなければなりません。

まとめ

今回は、養子縁組にまつわる落とし穴について解説してみました。

相続対策として縁組を検討する場合には、

・遺産を渡すのが目的なら遺言のほうが望ましい

・節税目的の場合なら逆に基礎控除が減ってしまう可能性を考慮すべき

という点にご注意いただきたいと思います。

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