市町村への遺贈寄付はなぜ増えないのか

寄付が欲しい市町村と市町村を選ばない遺言者

7月31日に日本経済新聞が、遺贈寄付に関して磐田市と静岡銀行、浜松いわた信金が協定を結んだというニュースを報じていました。

遺贈寄付の件数を伸ばしたい市町村が金融機関との間で遺贈寄付に関する協定を結んだというニュースが時々報じられていることからも、まだまだ遺贈寄付の件数は少ないのでしょう。

磐田市も、これまではせいぜい年に1件あるかないかという状況だったそうです。

とはいえ、市町村に遺贈寄付をしたいと考えている方が全然いないという訳ではありません。

実は筆者の経験上、遺言の作成について相談をうけているときに寄付先として市町村を候補に挙げられる方はいらっしゃったのですが、最終的には候補から外されてしまうことがほとんどだったのです。

つまり、遺言の内容を考えているうちに市町村から他の団体へと寄付したい先が変わってしまっていたということです。

それはいったいなぜなのか。

今回は、いつもと少し趣向を変えて、遺贈先に選ばれやすい先は、どんな理由で選ばれているのかを解説していきます。

遺言書を作成したいけれど、どこに寄付をしたらよいか分からないという一般の方にも参考にしていただける記事だと思いますので、ぜひご覧ください。

寄付の使いみちがはっきりしている団体は選ばれやすい

遺言の作成を検討されている方は、ごくたまーに、40代から50代くらいの方もいらっしゃるのですが、大多数は70代以上です。

そういったご年配の方々が、ご自分がこれまでに築き上げてこられたご資産を誰に託そうかと考えたとき、長い人生において大事にし続けてこられたもの、感謝している相手、共感している対象を優先するのは当然のことでしょう。

具体的な団体を指名される場合には、付き合いの長かったお寺だとか、お世話になった医療法人だとかを選ばれることが多いです。

一方、ペットを飼っているので動物愛護関係にお金を役立ててほしいとか、自分たちには子どもがいなかったけれど、親を亡くした子どもたちのためにお金を使ってほしいとご希望される方は、そういった団体があったらおしえてほしい、とおっしゃいます。

冒頭にご紹介した磐田市は、遺贈寄付の際に寄付金の使途を指定できるようですが、市町村によってはそうでないところもあります。

これは、遺贈はいつ受けられるのか予想しようがないのと、寄付のあったときだけ予算を増やすわけにもいかないことから、仕方のないことでもあるのですが・・・

そうすると、自然と特定の目的のために活動している団体が寄付先として選ばれることになるわけです。

不動産を引き取ってくれる団体は選ばれやすい

遺贈寄付を検討されている方の多くは、いわゆるおひとりさま、おふたりさま(お子さんのいらっしゃらないご夫婦)であることが多いのですが、そういった方々の悩みとして、「死後に自宅の処分をどうしたらよいのか」という問題があります。

この点につき、いくつかの公益団体は不動産の遺贈も引き受けられることをアピールされています。

私たちが遺言作成のご相談をいただく際、自宅不動産の処分について心配されていらっしゃる方に対しては、不動産もまとめて遺贈できる先として、そのような団体の紹介を優先することになります。

相談しやすい窓口の不在

ここまでは市町村に寄付をしようと考えていらっしゃった方の気が変わってしまう原因をご紹介しましたが、市町村に対して遺贈寄付の相談をしにくい原因の一つとなっているであろう事象をご紹介いたします。

当事務所で将来的に遺贈寄付をしたいというお客様から相談をいただいた際には、寄付を募集していることがどう見てもあきらかである団体を除いて、司法書士から寄付の受け入れ可否についてあらかじめ問い合わせをするようにしています。

依頼をいただいているお客様は、「いつ頃、いくらくらいの寄付になるか分からないので名前を伏せて問い合わせたい」と考えていらっしゃる方が多いからです。

このような問いあわせをすると、遺贈寄付を検討している誰なのかとしつこく尋ねられることもありますし、とんでもない話なのですが、遺贈の希望者を特定して生前に寄付をさせようと目論んでいるような口調の団体も・・・あります。

私たち専門家は寄付先の選定に関しては中立の立場ですが、遺贈に関して遺贈相手の開設した相談窓口には直接話をしにくいというのは当然のことといえるでしょう。

餅は餅屋、相続は相続の専門家に相談すべき

たとえば、ある飲料メーカーが新製品のテレビCMを作りたいと思った時、相談すべき相手はテレビ局だけではなく広告代理店も含まれますよね?

市町村が遺贈寄付に関して相談しようと考えたときも、金融機関だけではなく、そこと提携して実際に遺言を作成している信託会社とも相談すべきなのです。

実際、寄付を多く集めることができている慈善団体は信託会社へのアプローチも怠っていません。

筆者も信託会社に在籍していた際には、いくつかの慈善団体のPRを拝聴したことがありますし、そこを遺贈先としてお客様にご紹介したこともあります。

また、おひとりさまやおふたりさまは、亡くなった後の自宅や施設の後片付け、各種手続きの代行についても関心をお持ちであることが多いのですが、これらも信託会社と連携することで対応できるため、遺贈寄付と信託会社は相性がいいのです。

ですから、遺贈寄付に関しては、金融機関だけではなく、その提携先である士業事務所の運営する信託会社にもコンタクトを取り、三者で連携することが重要なのです。

まとめ

今回は、市町村に対する遺贈寄付が増えないことに関連し、

・特定の目的のために活動している団体は寄付先として選ばれやすい

・不動産を引き取ってくれる団体は寄付先として選ばれやすい

・遺贈する相手には相談しにくい

・遺贈寄付を増やしたいときには金融機関と信託会社に相談すべき

という内容についてお話させていただきました。

当事務所では一般のお客様からのご相談だけでなく、金融機関の本部で相続業務の推進に携わっていた経験を活かし、遺贈寄付を増やしたい市町村や、相続関連業務を増やしていきたいという金融機関からのご相談にも対応できます。

お気軽にご相談ください。

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