相続登記の義務化によって相続登記のご相談、ご依頼が増えていますが、相続の手続には普段使われない資料や専門用語がたくさん登場しますし、なんだかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、日常生活ではなじみの薄い「名寄帳」の分かりにくいポイントについてQ&A形式でご説明します。
Q:そもそも名寄帳ってなに?
A:市町村ごとに管理されている、ある人物がその市町村で所有している不動産を一覧表にしたものです。
解説:相続が生じた場合、亡くなった方のすべての不動産について相続登記をすることが義務付けられていますが、不動産の権利書や登記簿謄本を見ただけでは亡くなった方がどれだけの不動産を所有していたかまでは分かりません。
そこで利用すると便利なのが、名寄帳なのです。
亡くなった方が所有していた不動産の所在地の市町村役場に名寄帳を請求すれば、その方が所有していたその市町村内の不動産が一覧となって出てきます。
欠点は、請求した市町村の中にある不動産しか分からないという点です。
例えば自宅は静岡市だったけれど焼津の山にも畑を持っていたはず、という場合には、静岡市と焼津市の両方に名寄帳を請求する必要があります。
Q:固定資産税の請求書にも不動産の一覧が載っているけど、それではダメなの?
A:名寄帳にしか載っていない不動産が存在する可能性があるため、十分とはいえません。
解説:固定資産税の請求書(静岡市では「固定資産税・都市計画納税通知書」ですが、市町村によって名称が異なります)を見て亡くなった方の不動産を確認される方が多いのですが、実は固定資産税の請求書には、亡くなった方の不動産のすべてが記載されているとは限らないのです。
なぜなら、固定資産税の請求書は、固定資産税の課せられている不動産しか記載されていないからです。
たとえば、分譲地を購入した場合、公道から奥まった土地には私道がセットになっていることがありますが、私道部分は非課税であるため、固定資産税の請求書には載りません。
そのため、固定資産税の請求書を信じて相続登記をしてしまうと、後から私道部分の登記をしていなかったことに気が付くこともあるのです。
Q:名寄帳に載っている建物に家屋番号がない場合にはどうしたらいいの?
A:家屋番号のない理由によって処理の方法が異なります。
解説:名寄帳に家屋番号がない理由としては、①既存の建物の増築部分である、②未登記建物建物である、という二つが考えられます。
まずは①について解説します。
建物の評価は、一定のところまでは年々下がっていくため、建物が増築されたときには、増築部分だけが帳簿上は別個に記載されるのです。
このような場合には、名寄帳に記載された家屋番号のある建物について相続登記をすればよいのですが、登記にかかる登録免許税は増築部分の価格も合算して計算することになります。
次に②について解説します。
実は、未登記の建物が未登記である理由も二つあるのです。
一つは、単純に登記することをさぼっていたというもの。
もう一つは、そもそも登記できる建物ではないというものです。
前者は、自宅の購入時に借金をしていなかったケースで多く見られます。
この場合、表題登記(どこにどんな建物があるのかということだけを示した登記)を行い、その後に誰が所有者であるのかという登記をすることができます。
後者は、簡易な物置や車庫であり、登記をすることが認められた建物ではないというものです。
登記ができないけれど固定資産税のかかる建物については、誰が取得するのかを分割協議書に記載し、誰が取得したか(固定資産税を払うのか)を市役所に届け出れば手続きとしては十分です。