亡くなった方が遺言書を作成していなかった場合、遺産の分け方は相続人全員で話し合う必要があり、例外はありません。
相続人に認知症の方がいらっしゃる場合には成年後見人、未成年者がいる場合には親権者か未成年後見人、もしくは特別代理人が代わりに遺産分割に参加することになるのですが、話し合うべき相続人が不在の場合には、「不在者財産管理人」という役割の人を家庭裁判所に選任してもらい、その人に参加してもらうことになります。
不在者財産管理人とは
相続人の中に不在の方がいる場合に、その方の代わりに相続手続きに参加していただく人なのですが、ここでいう不在とは、単に付き合いがなくて連絡先が分からないとか、仕事の都合などで長期間どこかへ出かけているなどという程度のことではなく、全く居所が分からず帰宅の見込みもなく、生死も不明であるような完全に行方不明である状態のことを指します。
連絡先が分からないだけでしたら、戸籍の附票というものを使って調べることができますし、行方不明とは言えないのです。
不在者財産管理人がいるときの財産の分け方
不在者財産管理人がいるときには、不在者の財産を勝手に減らしてしまうことはできませんので、基本的には法定相続分相当の財産を相続させなければなりません。
本人が不在であることをいいことに、他の相続人が好きなように遺産の分け方を決められないよう、遺産の分け方には裁判所の指導・監督がはいります。
また、不在者が現れるか死亡が確定するまで相続した財産を保管しなければならないのですが、管理を続ける代わりに不在者の取得した遺産を供託することもできるので、不在者に対しては現金を相続させるようになることがほとんどです。
例えば相続人が長男と次男の二人のみで、1000万円相当の不動産と1000万円の預金が遺産であったときに次男が不在者であれば、裁判所は長男が不動産を、次男が預金を相続するように指示することになるでしょう。
不在者財産管理人の選任申立て
行方不明となっている相続人がいる場合、家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任を申し立てます。
この際に、行方不明者の戸籍や、行方不明であることを証明するための書類を添付します。