相続が発生すると、その瞬間から亡くなった方の権利も義務もすべて相続人に移転します。
遺言があれば遺言のとおりに移転するのは分かりやすいですが、たとえ遺言がなくて話し合いができていない状態であっても、権利と義務は相続が開始した瞬間から相続人に移転してしまっているのです。
権利(預金や不動産や株式といったプラスの財産)のほうが義務(借金や未払いの費用)より多ければ相続しても問題ないですが、義務が権利を上回っているときには相続したくないですよね。
相続放棄というのは、家庭裁判所に対して「自分は相続人になりたくありません」と申し出る手続きです。
この申し出が認められると、その相続人は最初から相続人ではなかったことにしてもらうことができます。
相続放棄のメリット・デメリット
相続放棄の最大のメリットは、負の遺産を相続しなくて済むようになることです。
亡くなった方の借り入れが何千万円、何億円あろうとも、相続放棄をした相続人は1円も返済する必要が無くなります。
また、最初から相続人ではなかったことになりますので、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。
相続人同士が不仲であり、相続財産が少ない場合には、相続放棄をしてしまうのも有効な手段といえるでしょう。
デメリットは、正の遺産も一切相続できなくなるということです。
相続放棄によって、新たに相続人になる方がいらっしゃる場合には、その方に迷惑がかかるというのもデメリットと言えます。
例えば亡くなった方の配偶者と子どもが相続放棄をすると、亡くなった方の親が相続人になりますし、親が先に亡くなっていた場合には、亡くなった方のきょうだいが相続人になります。
亡くなった方の借金が多いために相続放棄をしていた場合、新たに相続人になってしまった方々も相続放棄をしないと、借金を引き継ぐことになってしまいます。