着なくなった洋服や壊れてしまった家電は捨てることができますが、不動産はいらなくても捨てることができません。
不動産のうち、建物については解体することによって所有していない状態にすることはできましたが、土地については売ったり、誰かに無償であげたりするしか手放す方法がなかったため、どうしても相続したくない不動産がある場合には、不動産以外の財産も全てまとめて相続放棄する人もいたほどです。
手放す方法がない以上、農業や林業に従事していない人が畑や山林を相続してしまったとしても、そのまま所有し続けるしかなかったのですが、相続された方が遠方に住んでいれば管理することも困難であるため、相続させる側の立場であっても、あるいは相続する側の立場であっても、そのような不動産の存在は悩みの種でした。
結果として、「いらない土地」の存在は、相続登記も管理もされないまま長年放置されてしまう不動産が生じる一因となってしまっていたのです。
そこで、国が定めた向こう10年分の管理費を納めることによって、「いらない土地」を国に引き取ってもらうことができるようになったのが、相続土地国庫帰属制度というものなのです。
申請できる人
相続や遺贈(遺言によってされる贈与)によっていらない土地を取得した人が対象になります。
ただし、遺贈によって土地を受け取ったのが相続人ではない人であった場合には、その人は申請できません(遺贈を拒否できるので、いらないのであれば受け取らなければ済むため)。
また、この制度は相続の発生によって、“仕方なく”土地を取得することになった方が対象であるため、自分の意志で買ったり、誰かから貰ったりした土地は対象となりません。
制度の対象から除外される土地
建物が建っている土地や通路として利用されている土地については制度の対象になりません。
その他、土地の一部が崖になっていて管理が大変な土地や地下に大量のごみが埋まっている土地、通常の労力で管理できない樹木が生えている土地なども対象になりません。
例えば草や木が生い茂っている土地について国に引き取ってもらいたい場合には、あらかじめ現地の写真を撮影して法務局に相談しておくのがよいでしょう。
相談の際にお持ちいただきたいもの
ご相談の際には、①現地の写真、②固定資産税の請求明細(毎年4月頃に市役所から送られてきます)をお持ちいただけるとスムーズに進められます。